長谷川登鯉さんインタビュー(後編)
おまたせしました。前半に引き続き後半です。後半だけでも面白いのですが、もしまだ読まれていない方は前半も読まれることをオススメします!
後半はボードゲームの創作について、時系列でお話しいただきます。ゲームマーケットで話題になった作品や、制作において権利の話、テストプレイや広報について、アートを依頼される事の多い長谷川登鯉さんの経験談や考え方についてです。
ボードゲームが形になるまでの過程を教えていただけますか?
依頼の時点でテーマも決まってる場合もあれば、システムだけの事もあります。
テーマが決まっている時はまず、自分がその絵を描けるかな?と考えて、あまりにも不得意だったらお断りしますね。ただ、描けないけどこのタッチにしたら面白いんじゃないかなぁって思いついたものはお伝えします。
御用達は「全部描いてください」という依頼だったんですが、忙しくて全部は無理でした。名前からわかるかもしれませんが、江戸の商人がテーマのゲームです。和風のボードゲームはその当時から結構あったから、なにか変わったとこがあったほうがいいよなぁと考えて、たまたま僕の知り合いに、兎や馬を擬人化した武士なんかを描いている人がいたので、彼に頼んだらどうかな?と思いました。鳥獣戯画のような擬人化はまだそんなに出てなかったし。だけど、その人はボードゲームは遊ばないから、イラスト以外は僕の方で作業しないといけない。創作ボードゲームの事情だって知らないから普通にイラストを頼むくらいのお金を払わないといけない。と、なると二人ぶんデザイン料発生するからコスト的に優しくないんだけど…と前置きして、そうゆうやり方でどうですか?と作者に提案したら「それでいいです!」と言ってもらえて。
そんな感じで「これなら差別化出来るんじゃないかな?」っと考えてタッチを決めてたりもします。御用達では差別化以外に、1時間級のゲームに合わせた「品の良い感じ」を目指しました。気取ってない和菓子っぽさというか、品が良いけどカラフルにしたくて、かつ色弱対応も考えて。難しかったですね。
8bitMockUpはシステムだけが出来ていた場合で、さとーさんがテスト版(ルール制作者がテストプレイ用に作ったもの)を持ってきて遊んで、面白い!時間があまりないけど作りたいな…アートはどうしよう?って流れでしたね。実はダイスエイジを出す予定で、アートもちょっと進めていたんですけど、いろいろあってダイスエイジはホビージャパンさんから出ることになった。じゃぁどうしよう?ゲームマーケットには出たいけど新作がない。制作中のゲームからどれか完成させるとしたら…と考えて、それで8bitMockUpです。
ドット絵なら〆切までに描けそう。視認性も良さそう。カルカソンヌみたいに上から見た地図を描くと、草原と海の境目はなだらかになるじゃないですか。パキっとならない。海岸線も、道も、砂漠と草原との境目なんかもパキっとはなりませんよね?遊びやすいようにパキッと直線で区分けされてて違和感のないドット絵は視認性いいぞ!最初のドラゴンクエストとかハイドライドとか、昔のドット絵はパキッとしてるというか…するしかないから(笑)じゃあ世界感どうしようかって考えた時に、ポピュラスみたいに新しい世界を作るお話しか、ドラゴンクエストみたいに勇者が冒険して地図を作って「世界はこんな形でした!」って王様に報告するお話し。
さとーさんにドット絵で、ポピュラスかドラクエ、どうですか?って聞きました。そしたら分かり易いしポピュラスがいいですね。となり、作業をはじめました。
並行してコンポーネントをイメージして…ツイッターで誰かのプレイ写真を見て、見たこと無い形のコマが写ってると「このゲーム何だろう?」って興味を持ちませんか?タイルはカラフルに仕上げるとして、コマも変わった形にしたいと思って。それでいろいろと探して、別売りした豪華コマを見つけたんですけど、探すの大変でした。最初は、砂漠にはピラミッド、海には灯台、森には砦みたいなコマを置きたいね、なんてさとーさんと話していたんですけど、そんなの無い(笑)妥協して面白い形を探してもサイズがバラバラになって統一感に乏しい。もう全部同じ形でいいや、と探してみても欲しい色が無いんですよね。まぁ、最終的に選んだコマは色の種類も多くて他のゲームではあまり見ない形、という条件を兼ね備えてたし、つまみやすいから遊びやすかった。ただ単価が全然お話にならなくて豪華版として別売りになりました。そんな感じでアートとか世界観とか、コンポーネントも提案することがあります。
リメイクもありますね。
とあるゲーマーさんとツイッターで、「このゲーム面白いですよねー」「でも売ってないからリメイクするんならアートやりたいですねー」みたいなやりとりを、作者とは関係ない所で話していたのがきっかけだったのが、アムステルダムの運河です。既にルールは完成しているから、あとはプレイアビリティですよね。どうやったら視認性よくなるか?ストレス無く遊べるか?ルール覚えやすく遊べるには?とか考えて、デザインしました。
※長谷川登鯉さんとさとーさんがダイスエイジの制作秘話を語っているページがあります。こちら
※アムステルダムの運河のリメイクが決まったのはおそらくこのあたりなのではないかと。こちら
ここまで作業してしまうとと戻れない、というポイントはありますか?
無いです。ただ「間に合わなくなる」っていうポイントはあります(笑)〆切に間に合わなくてもいいなら戻ります。あ、ほぼ出来てるものを変えたいとおっしゃる場合、デザイン料追加…っていうことになると思います。でも経験無いですね。僕のせいで間に合わないってのは何度かやってますけど。申し訳ないです。
どの段階からアートの依頼を受けるのがお好きですか?
テスト版が出来てて遊ばせてもらえる状態が好みですね。「今度こうゆうゲームを作ろうと思うんだけど、まだルールが5割程度です」っていう状態だと「7-8割になってからまた声かけてください」って言います。ルールから共作しようっていうのなら5割でも3割でも良いですけど。
テスト版が出来てると、実際に遊んで、カードのどこにテキストを置いてアイコン置いてとか、そもそもカードサイズはコレで良いのだろうか?とか。もしカジュアルに遊べるゲームなのに、カードが大きくて場所を取ってしまうなら「遊ばれる機会が減ってしまいそうだからハーフカードにしません?」とか提案することが出来ます。ゲーム自体がふわっとしていると…見切り発車じゃないですけど、それである程度まで作業してて「これはハーフカードの方が良かった」となると、二度手間になので。
「最終得点の数値はまだ固まってないんです」くらいであればゲームの動きが分かるので、必要なものから逆算して作れるんで楽なんです。このゲームは数字が一番大事だから、じゃあ数字を真ん中にドンとでっかく配置、でも手札として持つからカードの端っこにも数字描かないといけない。そうなってくるとキャラクター描けるスペースはコレしかないから、そのスペースの中で表現できる絵で…それで個性を出すとしたらどうゆう絵だろ?と。木馬と英雄はそんな逆算で作ってます。最初に「ハーフカードにしましょう!」が決まって、手札になり場札になるカードで数字を真ん中と四隅に描く、でもキャラクターは欲しい。
木馬と英雄のテスト版はフリーのアイコンで作った可愛い感じのアートだったんですが、多人数でやるバトルラインみたいなゲームなので、なかなかむずかしいというか、あんまり可愛いっていう感じでもないから「ハードカバー小説みたいなイメージどうですか?」って言いました。難易度的にもそれで良いので、それで進めてくださいって事になり、次に絵のタッチをどうするか考え始めてみると、バトルラインとかギリシャをテーマにしたゲームは絵が似てるの多いと感じて(笑)じゃぁどうしようかなーっ?て。資料集めしている時に、ギリシャの壺とかに描かれているシルエットの絵を知って、これ使えないかな?と。自分なりにそのタッチで描いてみてカードのデザインとして成立させたものを数枚提案して「これいいですね!これでいきましょう」となりました。
進めてみると、このキャラでもハーフカードには4-5人までしか横に並べられない。数字が13まであるゲームだったと思うんですけど、普通の兵士を1として、もう1ランク上の兵長を描いて5の桁としました。1のカードは特殊効果ありなので英雄。ギリシャ神話の神様をモチーフにして、ヘラクレスとかを各スートに割り振っているんですけど、まず武器を決めました。その神様定番の武器で選んだんです。ポセイドンだったらトライデント。三叉の槍じゃないですか。で、ヘラクレスはいろんな武器もてって有り難いんで後回し(笑)あとアルテミスが弓。あと剣も欲しい。ポーズに差をつけるなら片手剣がいいから剣を持ってる神様を探したら、タナトスがいたから採用して。ヘラクレスは棍棒を持ってもらいました。テーマカラーも同時に考えましたポセイドンだったら絶対青ですよね。ヘラクレスなら赤じゃないですか。アルテミスは月と豊穣の神なので黄色、タナトスは時間と死の神だったから灰色。定番の配色は赤、青、黄、緑ですが、あのゲームがそうなってないのはタナトスのせい(笑)
そんな感じで逆算して決めました。このゲームでは得点カードは場札でもあって、テーブルに並べて取り合うんですけど、土地が描かれています。土地の奪い合いです。その土地カードは、どんな順番で並べても、ちゃんと絵が繋がるように描きました。要は道が描いてあったらどう並べても道が繋がるように描いたんです。システムには全く関係ないんですけど、そうすると遊ぶ度に違った世界が出来て楽しいんじゃないかなと思ったんですよね。
で、土地カードには1つ1点になる砦が描いてあるんですけど、砦じゃなくて、コルヌコピアはどうかな?と。ギリシャの豊穣の象徴で角笛みたいなのの中に果物がいっぱい入ったコルヌコピアっていうのがあるんです。世界観にも合うし、手札に描かれた兵士がシルエットで砦もシルエットだとシルエットシルエットじゃ面白みが無いし。4つの黒いシルエットの砦を手に入れて、4点だっ!っていうよりは、豪華な果物が入ったコルヌコピアの方がめでたそうだし良いと思って。それで両方描いて提案したんですけど、砦シルエットが良いですと返事があり、ちょっと粘ったんですけど(笑)「砦はパっと見て数えやすいから」と言われてそりゃそうだ、わかりました、じゃあ砦でいきましょう、と。それなら高得点の砦が多いカードほど背景を豊かに描こうと。水場とか森とかが多い背景。そっちの方が何もない砂漠より欲しいじゃないですか?
ルール側に提案はされますか?
オネズミ算は、僕がテストプレイを担当してて、その過程で考えた「こんなアイデアどうですかね?」がいくつか採用されてます。さとーふぁみりあ作品でも同じようなことがあります。
コピーライトや権利についてどうお考えですか?
オネズミ算で僕が提案したアイデアは、作者の与儀さんの中でシステムの重要なピースだったみたいで「共作にしましょう」と言ってくれました。それで共作になっているんですけど、テストプレイ中、そうやって重要なピースが出てくることは他の方も経験あると思うんです。だからどこまでが権利か…っていうのは凄く難しいですね。
アートに関しては、自分が全部やったときはアートワークって言います。ハピエストタウンはイラストは高見さん。僕はアイコンだったり、背景だったり、テキスト入れたりフォント選んだりとかやったけど、やっぱりイラストが主役なんで、名前を並べるにしても高見さんを前にしています。後々になって表記を見ても全員が気持ち良いようにしてあればいいじゃん、くらいの考えです。権利って言葉で考えたことは無いんですけど、これからそうなったりするんですかね?あるかもしれないですね。
イラスト単体での販売や同一性保持権についてどうお考えですか?
イラスト単体での販売は…絵、ルールに限らず、一言あって然るべきってのがまずあって、その後は話し合いで決めるんじゃないですかね。まだ、相手に黙って勝手なことやるリスクを負ってまで得するような規模じゃないと思うんですけど。
よく聞かれるのが「イラストレーターさんと、どうやってやりとりすれば良いですか?原稿料はどうやって決めれば良いんですか?」なんですけど…一枚いくらって謳ってないからわからないと思うんですけど、こちらもどのくらいの作業量があるかわからないので、謳えないわけです。
せっかくルールを作ったんだから、そこは話し合いで納得するように決めたほうが良いんじゃないのかな?って思います。「お幾らですか?」って聞くのは勇気が必要っていうのはわかります。わかるんですけど、こっちも「このくらいの価格になります」って答えるのは同じように怖いんですよ。そこはもうお互い様ということで。
コミュニケーションを疎かにした結果、悪い仕上がりっていうのは想像できるんですけど、逆はあんまりないと思います。コミュニケーションと言っても「あの絵は出来ましたか?」って何度も言わせてしまうのは失礼だから、状況は適度に連絡する。逆に「描けましたけど、これでどうですか?」と聞いたら答えが早く来る方が気持ちが良いとか、その程度です。見れないなら「今見れないんですけど、データ届いてます」って一言言っておくとか、それぐらいの事でだいたい円滑にいくと思うんですよ。あとは、例えばイベントでの実売数何個でしたとか、そうゆう情報をこちらが聞かなくても教えてくださるような方とは、また一緒に作りたいと思います。単純なんで(笑)
脱線ですけど、僕はなんでもかんでも敷居が下がればいいとは思え無くて、ある程度敷居があると、それを突破してくる情熱がある人か、それを敷居だと気付かずにぶち破ってくる人か、どっちかが多くなると思うんですよ。僕は前者も後者も大好きで、特に後者は面白いですよね(笑)今回のゲームマーケットならカニのゲーム作った人とか(笑)アレはもう敷居を飛び越えたんだか、気付かなかったのか、気づいててぶっ壊してきたんだかわかんないですけど、凄かったですね。完璧でした。発泡スチロールの箱をねじりハチマキ姿で台車で搬入ですから(一同爆笑)最高だな!と。モグワイブースの手伝いをしてくれたツクダさんが、カニのとこに行って「どんなゲームですか?」って聞いてみてください!と言うからそうしたんですけど、説明してくれた女性がねじりハチマキしてる事に気づいて、ねじりハチマキ…魚河岸みたいな格好してる…って思ってるうちに話の序盤を聞きのがして、「もう一回、最初っから言ってもらっていいっすか?」って。そしたら「理性を失ったカニがですね」って始まって「あ、最初っから聞いてもわからないんだー」って(一同爆笑)「この青いカニは目覚めたカニです!」って(一同爆笑)面白かったです。最高ですよね。
テストプレイについてどうお考えですか?
以前「テストプレイする側も大事」と聞いて、それからは気をつけています。プレイしているゲームがどう完成するかはさておき「自分はこういうの思いついた!」って気持ちが強くなっちゃうことがあるんですよね。それを相手側が「このゲームにとっては的はずれな事言ってる」と聞き流してくれればいいんだけど。色々な意見がでて出口がわからなくなっちゃうのもマズいので気をつけています。あと、基本的にはアイコンの配置とか、デザイン部分を見るようにしています。
テストプレイの回数も人によってけっこう違うみたいですね。カワサキさんは何回もやらないそうです。カワサキさんというば、クイズいい線いきまSHOW!って遊んだことあります?あのゲームを思いついた経緯を聞いたんですけど、自分には絶対無理!天才だな!って思いました。よく日常のアイデアをゲームにするって聞きますけど、出来る人って実在するんだ!と思いました(笑)あと、山田空太さんが好きです。本人に確認してないんですけど、でんしゃクジラって、十中八九お子さんの好きなものだと思うんですよ(笑)男の子って一定の年齢になると、判で押したように電車好きになるじゃないですか?たぶんそのくらいの年齢なんですよ。たぶんクジラも好きなんじゃないかなって(笑)たぶん男の子なんですよ、お子さん(笑)山田さんはそうゆうことが出来ちゃう人だと勝手に思っています。僕、山田さん作品すごい好きなんですよね。全部買ってます。なんだろうな…うまく言葉に出来ないんですけど、山田さんのフタリマチっていう二人用のゲームがあって、町を作っていって、そこに住民が来るんですけど、住民が得点なんです。住民が得点っていうのももう好きなんですけど、同点だったときは、双子の赤ちゃんが住んでるほうが勝ちなんです。その双子の赤ちゃんっていうフレーバーのチョイスが凄い(笑)赤ちゃんって尊いじゃないですか?しかも双子っていう(笑)なんというか…そんな考え自分からは絶対出てこない、でも言われてみれば納得できるんです。普通の事なんだけど変だぞ、っていうのが山田さんの作品の味で(笑)でんしゃクジラも、よくよく考えると、電車が並んでて、ワニがいて、ヤギがいて、クジラがいるセットコレクションって変じゃないですか(笑)普通それを作ってる時点で「なんか変だ」ってなるんじゃないかなぁ。全部電車にしようとか、全部動物にしようって整えるじゃないですか?ならないんですよ(一同爆笑)クジラだけ無理やり海が描いてあるカードとか出来ない。でもそれ、意図的に不可思議な世界を提供してるわけじゃないと思うんですよ(笑)あの感じに憧れてます。
他にもIKIのリメイク元になった、江戸職人物語には「喧嘩力」ってパラメータがあるんですね。火事とケンカは江戸の華ですから。あのゲームは一定周期で火事が起きるので、そこに備えるのが面白い「倉庫の街」なんかにも入ってるシステムを採用しているゲームなんですけど、まぁそっちはわかります。じゃぁケンカをどうゲームに落とし込んでいるかというと、ボードにトラックがあってですね、その周りに店があって、自分のコマを移動させて店に入って、いくつかあるパラメーターを上げたりするんです。で、喧嘩力パラメーターを上げておくとですね、トラックの移動中に他人のコマを通過した時に、ポンッて得点が入るんですよ(笑)このシステムはなんだ?って思いますよ。でも真面目に入ってるんです。
うちの妻が「ルールよくわかんないけど、この喧嘩力っての上げると強そう」ってガンガン上げて、もうクマみたいな奴で江戸の町をウロウロしたことがあって(笑)先ずステゴロ上等にして、それから「草履」だったかな?アイテム使ってグルグル走り回って(一同爆笑)
そこばかり話すと馬鹿にしているみたいに聞こえるかもしれませんけど、そうじゃないんです。IKIのkickstarterの準備は凄ーく大変ったみたいです。CAMPFIREも大変だと聞きますが、kickstarterは海外のサービスですからね。kickstarterでは紹介動画が重要らしくて、動画撮影しているんですけど、太秦で撮影したはずです。凄くないですか?段取りをしなきゃ出来ないと思うんですよ。急に行って「撮りたいです」で進めれる事じゃないから。よく出来るなーって。行動力も凄いです。まだ発売されていない縄文ってゲームは、アートもけっこう出来てたらしいんですけど「もっと力づよい感じじゃないと」ということで没だそうで、情熱とこだわりも凄いですね。僕ならそんなの勘弁してほしいですけど(笑)
また脱線して好きな方の話になったので、注目してる方で漏れてるだろう方も言わせてもらうと…□□〇〇〇の彼葉さん、チネチッタ1937の月並いおりさん、リトルタウンビルダーズのstudioGGさん。最近買ったトリテがとても面白かったnonononfactoryさん、ソルナーゲームズさんのミミックアーツも面白かったです。そしてトリックテイキングパーティーゲーム賞で大賞を受賞した与左衛門さんにも注目しています。
広報に協力される事はありますか?
ゲームによっては、フライヤー、ポスター、サークルカットとか値札なんかもやりますよ。出来る範囲内だったらサービスでやってます。こうゆう言い方はなんですけど、こちらも時間をかけて作ってるわけですから、それがあまり目立たない宣伝素材になってしまうのは勿体ない。だったらやります。あと、初参加の方だとよくわかんないこと多いと思うんですよ。
これは広報ではなく入稿の話ですけど、入稿方法の説明をくまなく読んでも何だかわかんない…トンボ??塗り足しってなんだ?みたいな。そういうときは入稿までやります。僕が印刷所に入稿できるカードデータを作って「じゃあ出来たんで入稿してください」って渡しても、それに問題があるか(入稿データを見ても)わかんないと思うんでやります。
ただ、カードは全部で何枚とか、このカードの裏面はこのアートで…っていう部分は、僕の方でミスっても責任取れないので、誰が見ても分かる状態のカード一覧を用意してサークルさんに見てもらって「はい大丈夫です」ってやります。「大丈夫ですって言いましたよね」って言えるようにメールを重要フォルダーに入れておきます(笑)
広報とズレちゃいましたけど、広報も含め自分の方が得意なことは、時間があればこっちでやります。そのほうが結果的に良いんじゃないかなー?って思います。
以前、アントワンヌ・ボウザさんと外人ダッシュを作った時はいろいろやりました。
先ず印刷所を聞いたら、締切がとても早い印刷所と、最低印刷数が多い印刷所の2社のどちらかにしようと考えていると言われて。そこは難しいと答えてから、僕がいつもお世話になっている印刷所さんのホームページのリンクを送って「ここで良いですか?なぜなら僕が良く知っている印刷所で、電車で行ける所だから問題があっても解決しやすいからです」って連絡すると、「それでいいよ」ってなりました。他にも内容物の手配が大変でした。外人ダッシュはポーカーチップが入ってるんですけど、システム的にこのポーカーチップが良い、というのがボウザさんには決まっていて、国内だと高いのであちら(フランス)で用意して日本に送ってもらったんです。ポーカーチップに貼るシールも必要だから、僕が何度か使ったことのある凄く納品が早い印刷所さんで、印刷して。それらを全部封入してもらおうとしたら、シールが箱に入らないサイズだとわかってわかって1枚1枚ハサミで切って。他にもサークルカットとかフライヤーとか、いろいろやりました(笑)その時は大変だったけど、間に入って翻訳してくれたヤニックさんとは今でも仲良くしてるし、ボウザさんがゲームマーケットに来るたびに寄ってくれるので嬉しいです。
ボウザさんだからですか?(我ながらゲスい質問ですいません><)
ボウザさんだからっていうか、フランスに住んでるから(笑)しかたない(笑)
でも日本でも似たようなことはありましたよ。カードデザイン担当のゲームのときに「入稿したら印刷所がこんなこと言ってきたんですけど、これってどういう意味ですか?」って質問があったので、僕も入稿データ作ってみて、印刷所に電話しながら「今、仮の入稿データ送りましたけどコレ合ってますか?」っていう確認して。それから「僕が入れたデータが合ってるらしいので、それで入稿って事で良いですかね?」ってサークルの方に確認とって入稿完了になりました。慣れてないと質問の意味がわかんない!ってありますよね。こっちは何回かやってるし、分かる範囲ならやりますよね。ゲームが完成して、出てほしいし。
(※ボウザさんと外人ダッシュを作った際のPodCastがボォFCにて聞けます。とても楽しいので、是非お聞きになってみてください)
サークル同士の販促コラボ企画(例:ゲスラブコラボ企画等)についてのお考えをお聞かせください。
ゲスラブコラボ企画をまとめるの、だいぶ大変だったと思います。企画された方は「ゲスラブばかりが得をする」と考えたみたいで、それじゃ申し訳ないと、とても丁寧に進行してくださったんです。ホント面倒だったと思います。
企画については「なんでもかんでも乗っかるよ」っていう気も無いし、ノリと勢いでスタートしたら失速、というのは好きじゃ無いんで、ちゃんと練られていて「お互いに得する」んだったら参加します。相手と自分とお客さんと、みんなが良いってなるんだったらいいですよね。
後は時間があるかですね。頼まれてるゲームのアートが疎かになっちゃうとまずいので、時間があればやります。
ゲムマのブースの工夫などをお聞きしてもいいですか?
うーん。。僕なんかよりよっぽど上手にやってるとこいっぱいあると思います。
最近は同人即売会用のグッズを売っているメーカーがありますよね。例えばポスター立て。あと、「あの布」って名前で売られてますけど(あの布屋)机に敷く布もあるじゃないですか?うちは妻のお手製ですけどね。もともとコミケのカタログ後の1コマネタページの経験談で連綿と培われた技術が集まったのが「あの布」らしいです。うちのお手製あの布は、そこを見て真似しつつ、ポケット部分だけは中が見えるようにメッシュで作る工夫したものなんですよ。他にも、机に置く組みたてひな壇棚みたいなのも売ってるじゃないですか?あああゆうのも良いんじゃないですかね。
いろいろやってる人いますよね。ウチは車搬入じゃないのであんまり大掛かりな事は出来ないし、何よりブースの工夫や売り方の工夫よりも先ずはしっかりとゲーム作れるよう考えないと。1作目を作ってみて、もっと勉強しないとなぁ;と思いました。ゲームそのものを面白いもの、良いものにするので手いっぱいです。
販路とかはどうされてますか?
いつも委託をお願いしているショップさんにばかり置いてもらってます。読み人知らず便利箱はいつものお店以外にも置いてもらいたくて、あちこちに連絡するの頑張ってたんですけど、疲れますよね(笑)断られれば少しガッカリするし(笑)
いつものお店であっても、お互い得しないとダメなんで「大丈夫ですか?お店に合ってますか?」っていうのはよく聞くんです。その店の客層と噛み合ってないと…棚の一部を使わせてもらうわけだから、あんま動かないの置いてても棚もったいないじゃないですか。だからよく聞いて、大丈夫なら置いてもらうようにしてるだけで、広めるための施策っていうのはあんまり。そこまで熱心にはやれてないです。
自分で作ってるものに自信が無い、ってわけでも無いんですけど。ボードゲームってみんなが楽しめるもの、とは、個人的にはそこまでは思ってないんです。みんなが楽しめるのもあれば、そうじゃないのもある。僕が好きなトリックテイキングも僕自身、最初は面白さがわかんなかったんで(笑)
間口を広くしておけば、楽しめる人のアンテナに引っかかる事があるかもってのも、わかってはいるんですけど…なんでかあんまり納得できてないんですよね。むしろそこらへん他の人の意見が聞きたいところです(笑)なので他の方のインタビューも楽しみにしてます。
終始穏やかで、好きなことについて本当に楽しそうに話して頂いた長谷川登鯉さんがとてもが印象的でした。僕の理解が浅く、あまり深くまで切り込んだ質問を出来てなかったのはとても恐縮です。
長谷川登鯉さんからは「アートの依頼やリメイクの相談はモグワイのツイッターアカウントにDMするかHPから連絡をお願いします。作業内容や締切を聞いてからお見積り等返信します」とお聞きしております。
様々な人がゲームを手に取り、取ってからも楽しさを倍増させるアートの力は偉大ですし、今後は日本もドイツのようにクリエーターとパブリッシャー、ルールとアートで分業されていくのかもしれません。長谷川登鯉さんをはじめとする、ゲームにもアートにも深い理解がある方に引き受けて頂ければ、より多くのボードゲーマーに、より分かりやすく、より楽しんでもらう事ができると思います。アートワークを強化したいゲームデザイナーの方、ルールが出来てきたら、思い切って見積もりを依頼してみるのはいかがでしょう?一ボードゲーマーとして、アートも含めて質の高いゲームを遊ばせて貰えるのはとても幸せな事なので、誠に勝手ながら期待させていただきます><。
長谷川登鯉さん、長時間のインタビューにお答えいただき、本当に有難うございました。